2019.06.03 / 健康・美容
アカモクって不思議な名前ですよね。どこから転じてアカモクという呼び名になったのか、そして歴史的な背景はあるのかなど、調べていたら、縁起物や神事にも使われていることがわかりました。
今回は、アカモクの名前の由来と共に、アカモクを使った神事やどうして縁起物としても使われるのかなど、アカモクの豆知識をご紹介します。
目次
アカモクは海外ではサルガッズムと呼ばれており、学名では【Sargassum horneri】 と表記されます。
サルガッズムという名前はスウェーデンの植物学者カール・アドルフ・アガード(1785-1859)によって名付けられました。
彼は藻類の分類において非常に著名な人物ですが、一方で数学・経済学者でもあります。
生物の分類において、それまでは動植物についての情報を整理し、分類表を作成、近代的な分類学を創始したのがカール・フォン・リンネです。このカール・フォン・リンネもまたスウェーデン人でカール・アドルフ・アガードよりも80年前に生まれ「分類学の父」と呼ばれているほどでした。
カール・アドルフ・アガードが活躍した時代もまた、分類学が大きく飛躍した時代であり、アカモクもその時代にサルガッズムという名をつけられたのです。
アカモクは大きな藻屑を形成して海の中を漂います。時には船の進行の妨げになることさえもあるほど、大きく成長するアカモク。
船の進行を邪魔されてしまえば、船は海を進むことができず、海外の船乗りからは悪魔の海藻という異名まで付けられるているそうです。
海外ではサルガッズムという名前を持つアカモクですが、アカモクの色は名前の通り、赤です。
アカの藻だからアカモなのですが、藻屑の様子を含め赤藻葛(アカモク)と呼ばれるようになったそうです。
なんと長くなると7mぐらいにまで成長するアカモクは時にはちぎれてしまうこともあり、ちぎれたアカモクは気泡の浮力から水面に浮かびあがり、大きな藻屑群を成して漂うことからアカモクと名付けられたそうです。
サルガッズムと同じように、アカモクは学名になります。そのため、地域によって呼び名が異なるのだそうです。
例えば秋田ではギバサ、山形ではギンバソウ、新潟県ではナガモなど
地域によって、「ギバサ」(秋田)や「ギンバソウ」(山形)、「ナガモ」(新潟県)などと呼ばれ、食されています。
東京では海藻というとワカメや昆布がイメージされることが強いのですが、秋田県の地域では、海藻というとギバサ、つまりアカモクが海藻として一番好まれているのだそうです。
食用の海藻は主に晩秋から春にかけて育つものですが、日本海沿岸地域の冬は厳しく、季節風の影響から寒波が強すぎ、ワカメや昆布といった一般的な海藻が育ちにくい環境で、海藻類は稀少なものでした。
そのため、八森地先の磯に力強い生命力を持って育つアカモク(=ギバサ)は昔から秋田で食用として珍重されてきたと言われています。
同じ東北でも、宮城県はわかめや昆布などの海藻がとても豊富に生産される地域のため、アカモクが磯についていても食用とはされてきていませんでした。
そればかりか、刺し網や養殖施設に流れ着き絡みついてしまうため、邪魔な海藻「邪魔モク」とまで言われてきました。漁業関係者からはバツモ、つまりダメな海藻扱いされ、藻屑として畑の肥料に使われてきたのです。
今では食用として見直されてきたアカモクですが、地域によってもこんなに差があるものなのですね。
平成から令和という時代になりましたが、令和も万葉集から引き出された言葉として今、万葉集が脚光を浴びていますね。
その万葉集の一句にアカモクが使われているものがあるのです。
アカモクを表す古語「玉藻」という言葉がありますが、実はそれ以外にもアカモクの古語があるのです。
それが万葉集に使われている「なのりそ」です。
万葉集の一句に
あさりすと 磯にわが見し なのりそを いづれ島の 海人か刈りけむ
というものがあります。
訳:これから採ろうと私が磯で見ていた「なのりそ」を一体どこの海人が刈ってしまったのか
ここで詠まれているなのりそ、それこそがアカモクの仲間を指す古語です。
なのりそという古語は現代では全く耳にしない古語ですが、万葉集の時代よりさらに遡ると日本書紀にまで至り、「なづけて、奈能利曽毛」という表現があるのです。
このように日本最古の歴史書にもアカモクは名を残しているのです。
悪魔の一面や、邪魔モクなどと呼ばれる一面を持ちながら、歴史にも名を残すアカモク。
そのアカモクは、縁起物や神事にも実は使われています。
アカモクはホンダワラ科に所属する海藻です。アカモクなどホンダワラ科の海藻は藻の葉先に小さな袋(気胞)を持つ特徴があります。気胞を浮袋にして海中で直立したり、海面を漂っています。
その特徴的な気胞は、古より稲穂を連想させるものとし、豊作や子宝に恵まれるようにとアカモクを束ねたものが縁起物として使われるようになったのです。
また、アカモクを干し時には束ねて干されますが、稲を束ねた穂俵(ホダワラ)に見立てるようになり、ホダワラが転じてホンダワラという名前がついた、と言われています。
このような側面から、アカモクは奉納されたり、飾り物としても活躍するようになりました。
宮城では、ダメ藻、邪魔モクなどと揶揄されたとお話ししましたが、実は、同じ宮城県内で神事に使われることもあるのです。
アカモクは神聖な儀式に使われる海藻でもあるのです。バツモとされる宮城県にある塩竈市のお釜神社では藻塩焼きという神事があり、アカモクはその神事に使用されているのです。
お釜神社では海水を煮て塩を除去する方法を教えた神様とされる塩士老翁神を祭っていて、藻塩焼きでは、積み重ねた海藻に海水をかけ煮詰めて塩を採るという神事を行っています。その時使われているのがアカモクなのです。
このように、地域による差や時代背景によってたくさんの呼び方や使われ方のあるアカモクですが、健康に良い食品としても近年、注目を集めています。
海藻類の歴史にあまり興味がない方でも、「へぇーそうだったんだ」と思いませんでしたか?
健康のためにも毎日食事に摂り入れたいアカモクの歴史と呼び名。食べる時にちょっと思い出してみてくださいね。